第75回サイエンスカフェ@ふくおか 活動報告

熱を電気に変換する分子ロボットの謎に迫る!

第74回サイエンスカフェ@ふくおかを開催いたしました!

 

サイエンスカフェ 第75回のテーマは

熱を電気に変換する分子ロボットの謎に迫る!」

~熱応答性分子科学を導入した熱化学電池の開発~

スマホ、車、PC・・・

今、私たちが何気なく使っている、様々なものに使われている電池

その中でも、熱の変化に応答して様々な効果を発生するような熱化学電池について

最新の研究結果なども踏まえて教えていただきました!

 

今回は新型コロナウイルス感染拡大を踏まえまして、BIZCOLIさんの

Zoomを用いての開催となりました!

※通常のサイエンスカフェであれば二部構成ですが、今回は一部のみとなりました。

 

今回の講師は、

 

東京大学大学院理学系研究科

 

山田 鉄兵 教授 です!

 

化学メーカーでリチウムイオン電池の開発に携わったのち、九州に12年半住んでいました。

現在、東京大学に勤めています。専門はエネルギー錯体化学。

 

中段の左端が

九州大学大学院

工学研究院応用化学部門

岸村 顕広 准教授

 

上段の左から二番目が

山田 鉄矢 教授

 

上段の右端が

九州大学先端素粒子

物理研究センター

吉岡 瑞樹 准教授

 

【第一部】

 今回は、山田先生が研究している熱化学電池について、そして、熱化学電池を動かすもととなっている分子モーターについて、他の様々な例をふまえつつお話していただきました!!!

 現在、私たちの身の回りにある様々なものに電池が使われており、その電池の発展がこれからの科学技術の発展を考えるとなくてはならないものとなっています。そこで、山田先生は利用されずに捨てられてしまう”熱”に注目し、その熱から電気を効率的につくりだす電池を開発するというアプローチに至りました。電池は通常、電気を貯蔵するためのものですが、山田先生の研究が進むと廃熱を利用した”発電できる電池”というものが私たちの身の回りにあふれる世の中が来るかもしれません!!!

熱化学電池とは?

熱化学電池とは、熱による酸化還元反応を用いた電池のことをいいます。それでは酸化還元反応とは何でしょうか?まず、酸化反応とは、対象の物質が電子を失う反応のことをいい、逆に還元反応は対象の物質が電子を受け取る反応のことを指します。このことから、酸化還元反応とは、二つの反応が電子のやり取りをする反応だと考えることが出来ます。そして、これらの反応は一定時間がたつと二つの反応が同じ分だけ起こり、あたかも反応自体が止まって見える状態(反応する物質と生成する物質の濃度が等しくなる)に達します。これを平衡状態といい、この平衡状態を熱によってあえて崩すことを利用して酸化還元反応で生じる電子の流れを取り出すことがこの電池の特徴です。山田先生は二種類のヨウ素イオン間で起こる酸化還元反応を用いた熱化学電池の開発を行っています!!!

分子ロボットとは?

先ほどのヨウ素を用いた酸化還元反応において、反応が加速すればするほど取り出す電子の量が非常に大きくなります。これを実現するために、山田先生はα-シクロデキストリンという物質に着目しました。このα-シクロデキストリンは低温側でヨウ素を取り込み、高温側でヨウ素を離す性質を持っています。この性質によって、高温側と低温側でヨウ素の濃度に差が出来ます。ヨウ素の濃度に差が出来ると、平衡状態が崩れて反応が加速し、より多くの電子を取り出すことが出来るようになります。α-シクロデキストリンのように、温度や光などの条件によって、選択的に特定の物質を離したり取り込んだりする物質や、形を変化させるものを分子モーターといいます。この分子モーターを用いて熱から電気に変換させるようなシステムの最終的な課題として、この分子モーター自体が仕事をすることが挙げられます。このことを踏まえて、山田先生が目指す分子ロボットは、分子レベルのモーター自体が仕事をすることによって酸化還元反応を起こし、電気を発生させるもので、その実現に向けて様々な努力が行われているようです。

(松崎)