第71回サイエンスカフェ@ふくおか 活動報告

第71回サイエンスカフェ@ふくおかを開催いたしました!

第71回ポスター

 

今回もBIZCOLIさんの素敵な空間をお借りしての開催となりました!

今回も大変多くの方にお越しいただきました。

 

今回の講師は、

 

  九州大学大学院理学研究院物理学部門

 

稲垣 紫緒 准教授   です!

東京生まれ、千葉育ち。大学では物理を専攻。卒業研究の時に、指導教官の先生に薦められた「砂時計の七不思議」田口義弘著(中公 新書)を読んで、すっかり砂の物理に魅了されました。つぶつぶしたものが集団で集まった時に、液体でも固体でもない、流れたり、 流れなかったり、混ざったり、混ざらなかったり、意表を突かれた 振舞いをするつぶつぶが大好きです。10歳下のだんなさんも粉体の研究者です。2015年九州大学物理学科に着任しました。現在は、 2018年4月に開設された共創学部も担当しています。 

    九州大学基幹教育院       九州大学大学院理学研究院物理学部門    先端素粒子物理研究センター 

  小林良彦特任助教 (司会)、       稲垣 紫緒 准教授(講師)、          吉岡 瑞樹 准教授

第一部

第一部では物理学上での粒の立ち位置、粒の基本的な性質、そして先生がどのような研究を
行っているか分かりやすくお話ししていただきました!

 

我々の宇宙は素粒子という最も小さい物質で作られています。

そしてその素粒子をもとに細胞や金属は作られ、生物、水、機械、などなど様々な状態が形成されています。これにより我々の住む地球には様々なもので溢れかえっています。

これら全てが物理であり、最小のものである素粒子を研究する人、最大である宇宙を研究する人、半導体やプラズマなどのものや現象を研究する人など様々な物理学者が存在します。

 

そんな中で今回のお話は「粒」についてです。粒の物理学はどのような立ち位置なのでしょうか。それは先ほど云った半導体などのものの性質を説明する物理学、「物性物理学」に当たるものです。物性物理学は様々な要素が絡み合う複雑な現象を多く取り扱うので、綺麗に答えがもとまらないことはままあります。このような物性物理学を「複雑系物理学」と云います。

複雑系物理学には、ソフトマター、カオス、粉粒体などがあります。

読んで字のごとく、「粒」は粉粒体」にあたります。

ではこの粉粒体」の研究とは一体どのような研究なのでしょうか。

 

  • 粉粒体とは?
    いろんなところにあるもの。調味料とか豆とか。とにかくツブツブなもの。
    この世の原材料の75%は粉粒体だそうです。
  • どうしてこんなことを研究?

    物理学とは自然の仕組みを解き明かそうとする学問。たとえどれほど複雑であろうとも説明できないと考えられている。この研究を行えば、次のような現象もしっかりと説明、予測できるようになると考えられています。

  1. 自然現象&自然災害
    海岸の風紋、なだれ、液状化現象...など。

    どのタイミングで雪崩が起こるかは自身と同じくらい予言しにくい現象です。

  2. 人や車

    形は違えど、振る舞いなどから粉粒体とみなして考えることができるものです。
    土星のリング、満員電車、交通渋滞などがあたります。

 

 

調味料とか砂くらいだろ〜って思われてたかもしれませんが、様々なことに対して粉粒体の研究はなされております。他にも定義としては、ゴマのように単体だと押せないが集まると押せる様な離散媒質であることなどがあります。

 

 

粉粒体物理の位置付けは非平衡散逸系という現象に分類されます。

 

非平衡散逸系の一例としてベナール対流があります。

これは雲や味噌汁で見ることができる現象で、温度勾配ができると決まった文様でパターンが発生するという現象のことを云います。

 

日常的にもこの様な非平衡散逸系の物理は様々見られます。

  • ペットボトルに砂と水と画鋲を入れる液状化現象
  • 細長い容器に粉粒体を入れると圧力が均等にならない。取り出しにくい。
  • 大きなものが浮いてくる。→ブラジルナッツ効果

  • ごま塩はどうして分離しない?→層状分離 

 

また先生は「砂山底面の圧力分布」問題に心血を注いでおり、この問題を解けたらやめてもいいと仰られていたのが印象的でした。

 

砂山底面の圧力分布

見た目は同じでも砂山の積み方によって内部の構造が異なる。

 

 

この様に「粒」の世界はかなり広く、様々な物理現象を生んでいるというお話を聞くことができました。  

 

第二部

第二部でも大変多くの方に参加していただき、
粒の物理について様々な質問が飛び交っていました。

 

「砂山問題を解くといいことがあるのか」

「ピラミッドもこの様な圧力分布の問題はあるのか」

 

など、第一部のお話に皆さん興味が尽きることのない様な印象を受けました。

座談会の様子

 

第72回 サイエンスカフェは、

 

「宇宙の謎にみんなで迫る!」

 

高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所

上野 一樹 助教

 

高エネルギー加速器研究機構 広報室

高橋 将太 科学コミュニケータ

 

のお二人を講師にお迎えして、

宇宙から降り注いでいるミューオンをみんなでお手軽に観測します。

とても実験的で楽しい、今年を締めくくるのに相応しい回だと思われます。

是非未来の科学者になりたい子供の皆さんもいらしてね。

  

2019年12月13日(金) 19:00〜21:00

BIZCOLI 交流ラウンジにてお待ちしております!!