みんなと”おもしろい昆虫たち”をつなぐ第25回サイエンスカフェ@ふくおかを開催しました!
第25回ポスター
サイエンスカフェ@ふくおか、第25回目の今回のテーマは「生物の謎に迫る!おもしろい昆虫たち〜標本と生態からわかること〜」です!昆虫は私たちにとって身近な存在で、知っていることも多いと思いますが・・・どんな新たな発見があるのでしょうか?今回はセミやチョウの不思議に迫ります!!
今回も会場はBIZCOLIさんでした!
たくさんの方に来ていただきました。ありがとうございます!
今回の講師は九州大学農学研究院昆虫学教室の紙谷聡志博士です!
紙谷先生は写真や図、動画や音など様々な方法を使って私たちに分かりやすくお話ししてくださいました。また、途中でスライドに笑いどころを挟みながら説明していただいたので、最初から最後まで楽しく聞くことができました!
講師の紙谷先生
紙谷博士のプロフィール
子供の頃から昆虫博士になることを夢見て、九州大学に入学・就職した。傍からは夢が叶ったかのように見えるが、実はな単なる昆虫博士ではなく、「ハムシ」という甲虫の専門家になりたかった。しかし、ハムシを研究したいという夢は、研究室に挨拶に行ったその日に打ち砕かれ、現在では、ヨコバイやセミを専門に研究している。現在の悩みは、息子と娘が昆虫採集につきあってくれないこと。小さい頃はヨコバイのオスメスを区別して採集していたのに…
皆さんはミンミンゼミを捕まえたことはありますか?よく夏になると「ミーンミーン・・・」と鳴くミンミンゼミ。最近流行りの○怪○ォッチというアニメにもミンミンゼミのキャラクターが出てきます。このアニメは福岡がモデルになっており、街中によくこのキャラクターが出てくる設定なのですが・・・実は福岡の街中にはミンミンゼミはいません!!間違ってるじゃん!!!
ミンミンゼミは東京だと街中に多くいるのですが、福岡では山に多く生息しており、街中にはほとんどいません。セミは暖かい所の方が住みやすそうな気もしますが、暑過ぎるのもダメみたいです。
・・・という衝撃?の事実から始まった今回のお話。ここからは、私たちにも身近でよく知っていると思っていた”セミのヒミツ”について教えていただきます。
皆さんはクマゼミって知っていますか?夏になるとシャアシャアと鳴くセミなのですが、そのクマゼミが1995年、福岡の中心地である天神に大量発生したのです!!!そこで、この謎の原因を調べてみると、どうやらセミにも人間が持っているある特徴を持つことが分かりました。皆さんはわかりますか〜?
答えは・・・なんと、食べ物の好き嫌い!クマゼミの成虫は色んな木を好き嫌いせずに食べます。しかし、幼虫はモチノキ科の木しか食べないのです!!つまり、幼虫は好き嫌いをするということです。人間と同じですね・・・。
幼虫は木の根を食べながら土の中で過ごします。幼虫は好き嫌いするということは、食べることができる木に生まれた幼虫しか成長することができず、食べない木に生まれた幼虫は成長できないということになります。
クマゼミはケヤキなどの街路樹が好みであり、天神はセミが止まれる木が少ないので、こうした「密集状態」が起こったということです。ちなみに、クマゼミが地中で過ごす期間は四、五年ですが、地上に出てからは約一週間の短い命だそうです。儚い命ですね・・・
そして、この調査からもう1つおもしろいことがわかります。
くり返しになりますが、幼虫は好き嫌いするということは、食べることができる木に生まれた幼虫しか成長することができず、食べない木に生まれた幼虫は成長できないということがわかりました。・・・あれ?幼虫に好き嫌いがあるなら、親が子を生むときに子の好きな木に生めば、みんな成虫になれるはずなんじゃ・・・?
そう、セミの親は子を生むときに幼虫の好きな木を選ぶのではなく、親自身の好きな木に子を産むのです!セミの親は人間と違って子育てに無関心なのですね。不思議!!
本来、動物たちは生き残ることを第一に考えます。なので、このクマゼミのように子が育つ木に産まないということは、動物の世界ではとても珍しいことだそうです!!
次のお話は、バイオミメティクス(生物模倣)についてです。皆さんは「バイオミメティクス」という言葉は聞いたことありますか?なにかの暗号みたいな言葉ですが・・・今からチョウの例を使って説明します!
お話の中で先生は、あるチョウの標本を見せてくださいました(先生の写真に映っている標本)。このチョウはモルフォチョウという名前のチョウで、写真だと分かりにくいのですが、標本を傾けたりして羽に当てる光の向きを変えると、羽の色が変わって見えるのです!!
チョウの右の羽に注目すると、左の写真だと明るい青に見えるのですが、光の当て方を変えた右の写真だと暗い青に変わっています。不思議〜!!
皆さんがチョウを触ったとき、手に粉がついたことはありませんか?チョウの体にはりん粉という粉がついています。この写真を見ると、羽についているりん粉に色がついているように見えるのですが、実はりん粉自体に色はついていないのです!
じゃあどうやって色を見せているのかというと・・・りん粉の構造を工夫することで、色がついているように見せているのです!
りん粉の断面を顕微鏡で見てみると、いくつもの層が重なった構造をしていることがわかります。その構造が、ある青色の光だけを反射させることで鮮やかな青色を作り出しているのです。チョウのりん粉の構造を使って、今までになかった色を作ることができるようになったのです!すばらしい!
つまりバイオミメティクスとは、このように生物の持つ力を人間の社会や生活に生かしていくことを目的とした研究のことなのです!!他にも、痛くない注射針、ヤモリテープ、モスアイフィルムなど、バイオミメティクスが世の中の役に立っている製品はいくつもあります。また、ここではチョウの例でしたが、セミの羽が持つ「はっ水性(水をはじく性質)」は製品に応用できる可能性があることなど、昆虫には未知の可能性がたくさんあります!
今回の講演では、よく知っている虫だと思っていても、実はまだまだ私たちが知らない秘密が隠されているということがわかりました!皆さんも是非調べてみてください!!意外と身近なところに、何か面白いことが落ちているかもしれません・・・!
〜セミのヒミツを語らう〜
後半のフリートークでは、セミについての様々な質問が絶えず飛び交っていました!例えば、セミが産まれてくる周期の話や、セミはいつ採りやすい?、ツクツクボウシは途中で鳴き止むことができない・・・など、他にもたくさんの面白い会話があり、盛り上がっていました!
(大倉)