第20回サイエンスカフェ@ふくおか 活動報告

みんなの体内時計に迫る第20回サイエンスカフェ@ふくおかを開催しました!

 

第20回ポスター

 記念すべき第20回を迎えたサイエンスカフェ@ふくおかの今回のテーマは「人体の謎に迫る!!〜人体の奇跡、体内時計の仕組みを解き明かす!〜」です!

 我々の生活習慣から規則正しく光るホタル、鳴くカエルまで!当たり前と思って気にも止めないような謎に迫る人体に仕組まれた時計・リズムを科学します!!

 

今回もたくさんの方に来ていただきました。ありがとうございます!

 今回の講師は九州大学 芸術工学院の伊藤浩史博士!会場では参加者の皆様と実験したり動画を見て、とてもわかりやすい解説をしていただきました!

講師の伊藤先生

伊藤浩史博士のプロフィール

 静岡県出身、ロボットアニメに夢中になって上京し、工学部に進学。大学ではものすごいオタク達をたくさん見て、これはかなわない!とロボット研究の夢を投げ出す。博士課程からやけっぱちで生物学の門を叩き、体内時計の研究をはじめる。東京工業大学修了。物理の研究室で博士研究員を経て、福岡の地にたどりつく。2011年から九州大学芸術工学研究院助教。飽きっぽい性格はなおっていないが、体内時計研究は今年で10年。博士(理学)。

 

 

 体内時計って聞いたことはある、イメージはできるといった方は多いのではないでしょうか。でも体内時計って人間だけにあるこゆうのものなのでしょうか?そんなことありませんよね。犬は夜になれば人間と同じように寝ますし、魚だってそうです。このように人間だけにとどまらず様々な生命に見られる現象です。というわけで、今回の1つめのキーワード”生命”について見ていきましょう!

〜生命ってなんだ?〜

 人はいつ死ぬのでしょう?と聞かれると、

 

・心拍が止まったとき

・医者が「ご臨終です。」と言ったとき

・法的には区役所に死亡届を出したとき

・人々がその人を忘れたとき              などなど

 

たくさんの考え方があるでしょう。しかしミクロの世界で見ると、人を構成する”つぶ”である原子は宇宙に存在し続けます。イメージとして生命をわかっていても、科学の言葉で明確に生命とはこれだ!と定義することはとても難しいそうです。具体的に”生命の定義”の何が難しいのでしょうか。もう少し例を見てみましょう。

 たとえば、草原の上に置かれた机を想像してみてください。下の絵のように。

 この「机」と「草原の草」生きているか死んでいるか判断できますか?

 判断出来ましたか?おそらくほとんどの方が当たり前のように「机は生きていない」、「草は生きている」と解答するのではないでしょうか。でもこの机と草ってセルロースと呼ばれる同じ素材なんです!なにをもって机だけ生きていないと判断したんでしょうか?

 また、世界には人工的にバクテリアという最近を作っちゃった!なんて例もあるそうです。皆さんは人の手で作られたバクテリアも生命と呼べますか?!

 

 このように見てくると、生命の定義には”生と死の境界”の扱いがひとつの足かせになっていそうです。

 世界には”生命”を研究している生物学者はいないそうです。いつの日か"生命とはなにか"という疑問に答えが出てくる日がくるのでしょうか...

 みなさん、”生と死の境界”って難しいと思いませんでしたか?しかし、「確かに”生と死の境界”って難しい...だけど面白い!!」と先生は語ります。みなさんも以下を読めば面白いかも!と思えるはずです!!

 

 体内時計とは”生命”にあるのではないかということで生命について掘り下げてきました。体内時計は”時計”というだけあって、規則正しく動きます。つまり”リズム”です!特にリズムの同期という現象が大切だそうです。どういうことでしょうか?では、今回の2つめのキーワード同期について見ていきましょう。

〜同期とは〜

 いきなりですが同期とは、周期の違うリズムが同じ周期になってしまうことだそうです。つまり、リズムのタイミングがそろうということです!例を見てみましょう。

 

ペットボトル振動子の同期

ペットボトルの飲み物を買って飲むとき、いきなり中身がドバーッと出てきたりしませんよね?どのように出てくるかというと、トクットクッと一定のリズムを刻んで出てきます。今回は以下のような2つのペットボトルを組にした装置を作ります。このペットボトルを逆さにすると水の落ち方はどうなるでしょうか?!

 2つの振動子をつなぐ管を塞いでいると、それぞれの振動子は独立にトクットクッと水が下に落ちていきます。ところが塞ぐのをやめて空気が行き来できるようになると、2つの振動子は交互にトクットクッと水を落とすのです!

アマガエルの同期

 今回も出ました、カエル! カエルがゲコゲコと鳴くのは聞いたことありますよね?1匹だと単に「ゲコ...ゲコ...」と鳴きますが、2匹になると鳴き声はどうなるのでしょう。答えは「ゲコ(カエル1).... ゲコ(カエル2)...ゲコ(カエル1)...」というように交互にカエルが鳴いているそうです。カエルは自分の鳴き声をアピールしたいらしく、別のカエルの鳴き声と被らないように鳴いているのだそうです。たくさんカエルが集まるとカエル自身も鳴くタイミングは難しそうですね...。

 この他にも女性の性周期や大勢の人の拍手などたくさんのところに似たような現象があるそうです。みなさんも同期現象を探してみると面白いかもしれませんね!

 では人の体内時計について考えてみましょう。なんと70日間もの間、人を部屋に閉じ込め、実験を行った人がいるそうです!実験者も被験者もさぞ大変だったことでしょう...。そんな実験の結果、明るいままだと睡眠に入るタイミングがずれていき、明暗をコントロールするとそれに合わせて睡眠を取るという結果が得られたそうです。つまり環境に変化がなければもともとの人に備わっている体内時計に従うということです。

 もともと人に備わっている体内時計って何時間でしょう?よく噂や本などで「25時間だ!」って聞いたりしてませんか?それは必ずしも正しくないのだそうです!実際は24時間を中心として短い人もいれば長い人もいるそうです。また、長い周期をもつ人が夜型になりやすいなりやすいということです。

 現在、体内時計は人を何日も閉じ込めなくても皮膚を解析すればその人の体内時計周期が分かるそうです。自分の体内時計が何時間かぜひ知りたいですね!!

 ちなみに、先生の専門としているバクテリアも寝るそうです!!そのリズムを作っているのがあるタンパク質であるということも判明しているそうです!あんなに小さな生物も寝るんですね...

 リズムを化学で作ることもできます。それがBelousov-Zhabotinsky(ベローゾフ-ジャボチンスキー)反応、通称BZ反応と呼ばれるものです。舌を噛んでしまいそうですがすごいんです!数種類の薬品をある比率で混ぜると、外から刺激を与えなくとも赤褐色→青っぽい色→赤褐色...というふうに周期的に色が変化するのです!何か生命のようなものを感じませんか?!

 

 私たちの何気ない生活リズムがこんな切り口があって、奥が深くて面白いですね!伊藤先生は最近、刺し身などにして食べられるイカにも注目してるそうです。今後の先生のご活躍に期待したいですね!

〜生命とリズムを語らう〜

 講演後恒例のフリートーク!「年齢によって体内時計って変わるの?」「体内時計は生まれつき決まってるの?」「遺伝するの?」といった様々な質問が飛び交いました。

〜次回のカフェは?〜

 

 次回のカフェ、テーマは、

「人体の謎に迫る!〜心の中へ探検、心の謎に迫る!〜」

 

 血液型診断に星占い、科学的根拠はないと言われても信じてしまうのはなぜだろう。。講師に九州大学芸術工学研究院 妹尾武治博士をお迎えして、迷信やジンクスを守ってしまう人の心を心理学を使って迫ります!

 7月25日(金)19:00から開催予定!

 予約等の詳細は後日当HPまたはSNSを通じてお知らせ致します!

(藤山)