第18回サイエンスカフェ@ふくおか 活動報告

みんなと”天然素材の不思議”をつなぐ 第18回サイエンスカフェ@ふくおかを開催しました!

 

第18回ポスター

 

 第18回サイエンスカフェ@ふくおか、今回のテーマは天然素材の都市伝説を科学する!〜きのこ、アロマ・・・自然の知られざる力〜きのこで健康に?アロマでリラックス効果?巷にあふれるちょっと怪しい天然素材の都市伝説に科学の目を通して迫っていきました!

 

今回も満員!いつもありがとうございます!

 

 今回の講師は、九州大学 農学研究院 環境農学部門 サスティナブル資源科学講座の清水邦義博士です!身近な都市伝説から科学へと至る道程を軽妙なトークで語っていただき、会場は笑いにあふれていました!

研究室の学生さんとご一緒に(中央が清水先生)

 清水邦義博士のプロフィール

九州大学農学研究院で博士号取得後、九州大学ベンチャービジネスラボラトリーの研究院を経て、2002年から九州大学農学研究院に着任、現在に至る。学生時代から一貫して天然素材の「よろずや」を目指し、樹木、きのこ、生薬、アロマなどの効能ならびに生理活性発現機構の研究に取り組んでいる。

 

怪しいキノコ…霊芝

 

 清水先生がまず最初に紹介してくれたのは、「霊芝(レイシ)」。またの名をマンネンタケとも言います。新聞の広告なんかで見たことある人もいるんじゃないでしょうか?中国では最も薬効の高いキノコとされていますが、見た目も名前もなんとも怪しげです。。

霊芝の写真 この大きさで数万円するそう…怪しい…

 

 ある日、清水先生は飲みの席でこんなことを言われたそうです。

 

「霊芝を飲むと二日酔いにならないよ。絶対体にいいから研究してよ。

おしっこもよう出るばい!

 

 

 この発言にサイエンスの匂いを嗅ぎ取った清水先生は、「霊芝は前立腺肥大症に効果があるのではないか」という仮定のもと研究を開始しました。前立腺肥大症とは、尿道を取り囲むように存在する前立腺が加齢とともに肥大、尿道を圧迫し尿の出が悪くなる病気です。「霊芝でおしっこがよく出る」→「霊芝は前立腺肥大症に効く」、論理は明快ですね!

 前立腺肥大症は、5α-リダクターゼと呼ばれる酵素の働きによって発症します。つまり、この酵素の働きを阻害することができれば前立腺肥大症に対処することができるわけです。霊芝を含む19種の食用・薬用キノコでこの5α-リダクターゼ阻害効果を調査した結果、霊芝が最も阻害効果が大きいことが分かりました!さらに、これまた前立腺肥大症を促進する男性ホルモンの働きを抑制する抗男性ホルモン作用を持つことも確認。飲み屋のおじちゃんの話が科学的に証明されたのです!!

なんと霊芝ドリンクをご用意いただきました!

独特の苦味がなんとなく身体に良さそうな印象…

 

アロマの効果を科学する

 

 続いてアロマ、つまり自然の香りを科学していきます。最初に出てきたのは、月桂樹の葉

 ローリエという名前で香辛料としてスーパーでも売られていますね。この月桂樹の葉には、抗菌、去痰、免疫力向上作用などがあることが知られいます。しかし、いま注目したいのは”香りの効果”!頭がパッと冴えるような香りを持ったこの葉っぱ、科学的にもその効能は確かなのでしょうか?それを検証するため、清水先生は下のような検証装置を用意し、実験を行いました。

すごく実験してる感のある画!

 

 見てみるとなんとな〜く状況はわかると思いますが、ロートから香り成分を出し、それを嗅ぎながら簡単なテストを被験者に行なってもらいます。香りのある状態ない状態で同様のテストを行い、その結果から香りの効能を確かめます。また同時に心電図と脳波の情報も取得します。

 この実験の結果、月桂樹の葉の香りを嗅ぎながらテストを行なったほうが正答率が高く、反応時間も速いことが確かめられました!また、心拍数の測定から、月桂樹の葉の香りを嗅いでいる方が、心拍感覚が短く、常に緊張状態が維持されることが分かりました。月桂樹の葉の香りには注意力低下抑制効果があることが科学的に確かめられたのです!

 

 同様の実験をモミの葉で行なった結果も紹介されました。モミの葉の実験では、脳波の測定結果から、作業後の脳の覚醒状態が低下するということが判明しました。つまり作業後にもかかわらず、脳が覚醒状態になることなくリラックス状態になるということです。モミの葉の香りには、作業後の覚醒度の低下・睡眠誘導効果があり、不眠改善につながることが確かめられたのです!

 

たけのこの皮を科学する

 

 最後に登場したのは、「たけのこの皮」

 たけのこの皮って言われてもいまいちイメージできませんよね。

こいつです

 

 どこかで見たことありますよね!そう、よく昔話でおむすびをつつんでるアレです!中華チマキとか、精肉店でお肉買った時とか、ときどき見かけます。なにかといろんなものを包んでますけど、なにか理由がありそうですよね?そう、例えば抗菌効果があったりして…。

 実はこの予想が当たっています。たけのこの皮を化学的に分析すると、Stigmasterol, Dihydrobrassicasterolという抗菌活性物質が含まれているんです!昔の人の習慣には必ず意味があるんですね。

 

 たけのこといえば、もうひとつ忘れてはならないのがその驚異の成長スピード!最盛期には日に1メートルも伸びるのだそうです!これにもやはりなにか秘密があるのではないかと見た清水先生は、たけのこの皮を分析。その結果、皮の中に植物成長促進物質である1-Triancontanolという化学物質が含まれていることを発見しました!たけのこの皮を粉にして撒けば他の植物の成長も促せるということで、ほとんどが廃棄にまわされるたけのこの皮の再利用の道を切り拓く発見となりました!

 

都市伝説?科学?を語らう

 

 今回もあっという間に終わってしまいました。身近な噂や都市伝説から科学の発見が生まれる過程はワクワクしますね!「ぜひ、みなさまからも研究のヒントとなる噂をくだささい」という清水先生の言葉で、講義終了後も議論が賑わっていました!

 

 

次回のカフェは?

 

 次回のカフェもすでに詳細が決定しています!

 5月2日(金)19時より、「生物の謎に迫る!!〜永遠の好敵手、カエルとヘビの特殊能力に迫る!〜」をテーマに九州大学の吉村博士をお招きしてお話いただきます。サイエンスカフェ@ふくおか初の女性研究者!みなさんの知らないカエルの驚異を乞うご期待!!

 詳細・申し込みはこちらよりお願いします!

清水先生から次回の吉村先生へ、霊芝でバトンタッチ!

(古浦)